Chapter 6
「くそ!どっちへ行きやがった」
足跡を追って、3人は街の大通りまで出たものの、フランクの行方を見失って
いた。何も知らない街の人々がいつもと同じように行き交っている。
「街から出るつもりか?」
ケインが言う。
「いや、奴はこの街に何か目的があって来たはずだ。それを……」
「うみゃあ。ケインちゃーん」
酒瓶をかかえたメロディが声をかけてくる。さすがに今は相手をしている時間は
ない。
「ああ、メロディ。今忙しいからまた今度な」
ケインが言うとメロディはちょっとがっかりした顔で言った。
「みゃあ。ケインちゃん、いそがしいですかあ。そういえばヘキサちゃんも
さっきいそがしそうにしてましたぁ」
「見たのか!ヘキサを」
アルベルトが聞く。
「うん。ヘキサちゃん、さっきこうえんの方へとんでいきましたぁ」
「公園?陽の当たる丘公園?」
トリーシャが言った。
「はい。メロディが、さっきのおともだちのにおいがそっちからするよ、
って言ったらおおいそぎでとんでいきました。」
3人は顔を見合わせ、うなずきあった。
「わかった。ありがとう、メロディ。今度またな」
ケインはメロディの頭をなでた。
「うんみゃあ。はぁい。じゃあメロディ、お酒持っていくんで、かえりますね」
メロディは、また嬉しそうな顔になると、そのまま家路についた。
3人は、メロディを見送るとはじかれたように駆け出す。
公園はすでに閉門の時間であった。しかし、その門を何者かが破壊し、
入り込んでいた。
「行くぞ!油断するな!」
ケインが剣を抜く。
「トリーシャちゃん、俺達の後ろで魔法の援護を頼む」
アルベルトも槍を構えた。
「了解!今度こそ特訓の成果をみせてやるんだ」
一人、瞳に炎を宿すトリーシャ。
「いや。それはいーから」
二人に同時に突っ込まれるトリーシャではあった。
3人は慎重に公園内に入り込む。緊迫した空気があたりに充満していた。
全身の感覚が、研ぎ澄まされる。
「ところでひとつ気になっているんだが」
「どうした?」
アルベルトが油断なくあたりを見回しながらケインに尋ねる。
「ヴェルミィが兵器だとするよな。だとすると、制御機構はどうなってるんだ?」
「制御・・・・・・」
「ああ。制御の利かない兵器は役に立たない」
「・・・確かに・・・うーん」
ケインがふ、と考えを巡らした時、、
「!」
木立がガサリと揺れる。
「そこかあ!」
アルベルトが槍を構える。
「だーっ!違う!俺だ俺!」
茂みの中からヘキサが飛び出してきた。
「ヘキサ!無事だったか!」
ケインが駆け寄る。
「ああ、何とかな。ここまで追ってきたんだけど暗がりで見失っちまった」
「ヴェルミィは……」
きゃーっ!ヴェルミィの悲鳴が響く。公園の中央の広場あたりからだ。
「あっちか!」
「くっそー、あんのヤロー」
ヘキサが猛烈なスピードで飛び出す。
「待てよ!おい」
それを追いかけて3人も駆け出した。障害物をひたすら乗り越えて、公園の
広場につく。
「わっ!こら!やめろ!ちくしょう、コントロール・コアをどこに・・・・・・」
テロリスト、フランク・ブラスターは逃げようともがくヴェルミィと格闘
しているようだった。
「そこまでだ!フランク・ブラスター!大人しくしろ」
アルベルトが叫ぶ。
「ふん。早かったな!」
フランクはどにかヴェルミィを押え込むと、ケイン達の方に向き直った。
「きさま!何をするつもりだ!」
ケインも剣を構えた。
「そうだ!とっととヴェルミィを離しやがれ!」
ヘキサが今にもつかみかかりそうな剣幕で怒鳴っていた。
「何を、する、か。ふん。貴様らに言った通りさ。こいつをショート研究所に
納品して金を貰うつもりだったのさ。買っていただけない時は、こいつで
エンフィールドを消し飛ばす、という条件でだがね」
「なっ……」
ケインが発しようとした怒りの言葉を遮り
「おい。そりゃどういう意味だ!」
ヘキサが戸惑いの表情で聞く。
フランクはにたあ、と笑い、
「おや、そっちのチビのナイト様は知らなかったのかい?こいつが」
「いやぁっ!ヘキサには、ヘキサには言わないで!」
ヴェルミィが叫ぶ。
「やめろ!ヴェルミィがいやがってるじゃないか!」
ヘキサが絶叫する。
「ふ、ふははははは!いいねえ。人形同志の恋人ゴッコか。でも坊主。そいつは
報われない恋、ってもんだ。何つってもこいつは……」
「やめろぉ!」
「ヘキサ!」
止めようとしたケインの手を振りきり、ヘキサが猛スピードでフランクに向かって
飛ぶ。
「うぉ!」
意表をつかれたフランクの顔にヘキサが強烈な蹴りをカマした。
「だぁっ!」
フランクは思わずヴェルミィをつかんだ手を離した。
「今だ!逃げろ」
「うんっ!」
ヴェルミィはフランクの手を離れ、宙に舞いあがった。
「この……使い魔風情が!」
フランクは、こめかみに血管を浮かせ、ヘキサを力任せに跳ね飛ばした。
ヘキサは、フランクとケインたちの間に叩きつけられる。
「ぐはっ!」
ヘキサがうめいた。
「くたばりやがれ!」
フランクがヘキサに銃口を向けた。
「危ない!」
ケインが叫び、そして飛んだ。
銃声。
「!」
「ケインさん!」
アルベルトとトリーシャが叫ぶ。ヘキサを狙った弾丸は、覆い被さるようにして
ヘキサをかばったケインの腕に命中した。ケインは持っていた剣を取り落として
いた。
「……」
ケインの腕に、灼けるような痛みが走る。
「く……」
ケインの顔は苦痛に歪んでいる。
「ふん。使い魔ごときと引き換えに命を落とすか?酔狂なことだ」
「…や、やかましい。仲間をかばうのは、当たり前のことだろ」
肩を押え、冷や汗を流しながらもケインは答える。
「そうか。じゃあ、二人仲良く、あの世へ行けよ!」
フランクが再び撃鉄を起こした。
「く・・・・」
ヘキサは、ケインにかばわれながらうめいた。
「ちっくしょう・・・なんとかならねえのか・・・」
その呟きに<何か>が応えた。それは、
「あ・・・あのヴェルミィの・・・」
ヘキサの懐の中の”おともだちのしるし”だった。微かに蒼く輝いている
だけであったあの宝珠は、今やそれ、とわかる青白い輝きを発していた。
その光を見たフランクが目をむいた。
「そいつは、コントロール・・」
フランクがその言葉を言い終える前に、声が響いた。
「もう、おやめなさい」
「誰だ?」
声は星ひとつ出ていない空から響いている。その声と共に星と見まごう光が
降りてきた。
「ヴェルミィ!」
トリーシャが声を上げた。
光の中にいたのは、あのヴェルミィだった。しかし、その表情はもはや、あの
あどけない少女ではなく、憂いと悲しみをたたえていた。そして、
「羽根が……」
ヴェルミィの背中の羽根はいつの間にか、3対、6枚へと増えていた。
ヴェルミィは悲しそうな顔をすると、囁くように言った。
「ヘキサ、嘘をついてごめんなさい」
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