あたしは、シルフィール。こんどのおたんじょうびで、7さいになります。
ていとウォールにすんでいます。
おとうさまは、おみせをもっています。メイドちょうのライザのはなしでは
このまちでも、1ばんか2ばんの大きなおみせだそうです。おいそがしいのか、
おうちにはほとんどいません。おかあさまは、2ねんまえに、はやりの
びょうきでなくなりました。ときどきゆめであいにきてくれますが、おきると
わたしはまた一人ぼっちです。そんなときは、ないてしまいます。
ライザはやさしいメイドなのですが、あたしをおそとにあまりだしてくれません。
「シルフィールさまに、もしものことがあったら、おとうさまにもうしわけが
たちません」
きょうは、クリスマスです。でもおとうさまはもどっていらっしゃいません。
とおくのまちに、おしごとでいっていらっしゃるのだそうです。
「プレゼントはおあずかりしていますよ。それからまち1ばんのケーキやさんに
大きなケーキをおねがいしています。いいこにして、おまちになっていて
くださいね」
あたしは、すごくかなしくなって、おうちをとびだしてしまいました。おとう
さまも、ライザもあたしがほんとうに、ほしいプレゼントなんかわかってないん
です。
まちはクリスマスです。みんなたのしそうです。あたしよりちょっとおねえ
さんの、メイドさんをつれたおんなのこがプレゼントをえらんでいます。ライザ
もああやってあたしについてきてくれないかな。おんなのこはなにかおこって
プレゼントをかうのをやめていってしまいます。どうしたんでしょう。そうだ。
サンタさんにたのめばいいんだ。まちをサンタさんがいっぱいあるいています。
みんなおじいちゃんです。そのなかのひとりにあたしは「サンタさん?」
ときいてみました。けれどその人はサンタさんのかっこうをしたわかいひとでした。
「おにいさんはサンタさんじゃないんだよ」
「じゃあどこにいるの?」
「しらないねえ。さあおにいさんはいそがしいんだ。いったいった」
サンタさんのかっこをしたおにいさんはあたしをつきとばしていってしまい
ました。あたしはかなしくなって、みちのまんなかで泣いてしまいました。
「どうしたの?」
おんなの人がこえをかけてくれました。かみのけがみじかいので、おとこの人
だとおもったのですが、ちがいました。うしろににもつ持ちらしいおとこの人が
いっぱいにもつをかかえて立っています。あたしはおとうさまがずっといない
こと、ライザがおそとにだしてくれないこと、ひとりぼっちでさびしいこと
なんかをはなしました。
「おとうさまも、ライザも、サンタさんも、あたしなんかいらないんです。」
「・・・・そんなことないわよ。みんなあなたのことしんぱいしてるんだと
おもうな」
「でも・・・・」
「・・・・あなたのおうちはどこ?」
あたしはおうちのばしょをおしえました。
「それじゃあ、まどに靴下をさげてまっていてくれる?」
「おねえさん、サンタさん?でもサンタさんはおじいさんなんでしょ?」
「あはははは。たのしみにしてまっててね」
おねえさんはたのしそうにわらうと、にもつもちに
「さあ、ミナミ、いきましょ」
といっていってしまいました。
ライザにはいっぱいおこられました。でもおこった後はケーキをちゃんと
だしてくれました。
「おとうさまからおてがみがとどいてますよ。はやくシルフィールさまのおかお
がみたいそうです」
「・・・・」
あたしは、だまっておへやにもどりました。さっきのサンタさんのことばが
ちょっとうかんできました。
よるになりました。あたしは靴下をまどぎわにつるしました。すると、まどに
だれかのかげがうつります。
「!」
「えへへへ。きたよ」
ひるまのおねえさんがいました。こんなにみがるなのは、やっぱりサンタさん
なんでしょうか。おねえさんはふところにちいさなこねこをかかえています。
「おねえさん、サンタさんなの?」
「まあ、そんなもんね」
「ねえねえ。サンタさんってせかいじゅうまわるんでしょ?おはなしききたいな」
「そうねえ」
おねえさんは、かいぞくのしまや、ぜんぶがきんでできたまちのおはなしなんか
をしてくれました。あたしはもっとおはなしがききたかったのですが、
「にゃあ」
と、こねこがなきました。
「そのネコちゃんは?」
「うん。おかあさんがしんじゃったんだ。ばしゃにひかれちゃったのよ」
「・・・・あたしとおんなじだ」
「このこのおかあさんになってくれないかな」
「え?」
「シルフィールちゃん、おかあさんがいなくてかなしいでしょう?だから
このこがかなしいのもわかってあげられるんじゃないのかな」
「あ」
「かなしいのは、シルフィールちゃんひとりじゃないの。いい?でもね、
かなしいことのぶんだけ、いつかしあわせがくるのよ」
「・・・・」
サンタさんが、あたしのかみのけを、やさしくなでてくれます。
それはとてもとても、なつかしいかんじのするてのひらでした。
あたしはなみだがでました。かなしくないのになみだがでました。
「まだおやすみになってらっしゃらないの?」
ライザのこえがしました。
「いけね。おとなにみられちゃいけないきまりなんだ。いい?このこを
たのんだわよ」
サンタさんは、あたしのむねにネコちゃんをおくと、あたしの目をじっと
みつめました。そのきれいなむらさきのひとみは、やさしかったけど、
どこかさびしそうにみえました。
サンタさんはきたときとおなじにまどからでていきました。あたしはいそいでまどを
のぞきました。もうサンタさんはいませんでした。
「おじょうさま。どうしたんですか?」
ライザがはいってきました。あたしはライザにいいました。
「サンタさんがきたの。サンタさんっておとこの人じゃないんだよ」
「!」
ライザはびっくりしたようです。
「にゃあ」
こねこがなきます。
「そ、それは」
「プレゼント。ねえ、あたしこのこのおかあさんになりたい」
ライザはめをまんまるにします。そしてあけっぱなしのまどをみて、
「どこからかまよいこんできたのかしら」
と、ちょっとむずかしいかおをしましたが、すぐにやさしいかおになって、
「わかりました。おとうさまには私からおねがいしておきます。
でも、めんどうはごじぶんでみられるのですよ」
「・・・・うんっ」
「さあ、ミルクをよういしましょうね」
俺達の一行は、ウォールを出発する。道端の小さな石積み。野の花が
手向けてある、そこに俺はちらりと目を向けた。
「あの小猫、どうした?」
「ま、ちょっとね」
「ところで、このこのおなまえはどうしましょう」
「うーんとね。リラ。」
「リラちゃんですか。すてきなおなまえですね」
あのサンタさんのおなまえです。にもつもちがひるま、そうよびかけて
いたのをあたしはたしかにききました。
「リラちゃん、あたしがきょうからおかあさんよ」
「にゃあ」
|